
いつもお世話になっている建具屋さんのお手伝いで、
お預かりしたふすまたち、20本程の内の10本程が。
見た瞬間、「これを張り替えるのは、ム・・・」
見つめたままちょっと止まってしまいました。
(この写真のふすまはキレイですが・・)
これらは文化財指定された築相当年数の旧家のふすまで、
修復工事と共に張り替えとなった訳ですが、ここまでの状態のふすまを張り替えるというのは、
一般的にはなかなかないと思います。
文化財ならではでしょう。一般家屋では、まず新調してしまいますね。
建具の本数もかなり多く、間取りを図面で見せて頂いたのですが、
まず迷子になっちゃうな、というくらい部屋数が多く、複雑な造りになっています。
文化財修復作業の規定は、いくつかランクに分けられていて、
今回はどうにもこうにもという箇所は修復でなく、改修(風合いを変えずにつくりかえる)OKとの事なので、
現場ではあらゆる職人さんがかなり、苦労されていたみたいです。
(屋根が一部抜けて、落ちた屋根が床も突き抜けて・・とか。)
その都合で、鴨居や敷居を改修された為、開口部の寸法が変わってしまった所がでてきました。
建具屋さんも、その開口寸法に合わせて、改修というより改造する建具の作業法で苦労されていて、
ちょっと作業内容を聞かせてもらいましたが、それはそれは、とても手間のかかる技術内容でした。
手を加えた事をわからないようにしつつ、寸法やら形やらを変えなければいけません。
しかも、下手に力を加えると簡単に分解してしまいそうという状態からの作業なので、
タイヘンです。
自分担当のふすまなんですが、これらも寸法変更のモノは一部改修、残りは修復となりました。
(今回、お預かりした以外に、まだまだ本数はあります。)
現状はというと、さすが、手の込んだ作業をされた跡が見受けられます。
下の写真は、おもての紙のアップです。
紙を継張りされた跡が見えると思いますが、
この張り方はレンガ張りといいます。
通常一枚の表紙だけで張り替えることが多いのですが、
この張り方は一枚の紙を何枚かに切り分けておいて、
本体に張るときに改めて、組み合わせてレンガ積みのように張り合わせる手法で、
とっても手間のかかる作業です。
しかも、この本数。
おそらく、紙の枚数は3ケタは、いってます。
作業としては、紙を切り分ける計算や張る方向、糊の量、オープンタイム、ラインをキッチリ通す等、
キレイに仕上げる条件がいろいろ多く、大変なんです。
(柄の繋ぎ目が合ってないですが、この紙の場合、合わせる事はできないと思われます。)


引手も下地の銅の錆色がでていますが、元は金色の最高級品です。
本体重量も近年のふすまに比べてかなりずっしりと重く、
近代手法ではなく、本来の貼り方である台帳下地を何遍張りか重ねた下張り手法を用いられている事が伺えます。
また、写真ではわかりにくいですが、枠は漆塗りの深みのある紅色です。
汚れを拭き取ると、相当年数が経っているにも拘らず、キレイな艶がよみがえってきます。
ただ、下の方がネズミさんにかじられすぎて、すっごくくびれたウエストラインみたいになっていますが・・
ちょこっといじると、折れちゃいそうなのがイッパイあります。
なんで、ネズミさんは全部かじらずに、ちょっとだけ残すんですかね? ふと、今思いました。
とまあ、落ち着いた解説はここまでで、本題はここからです。
長くなるので、写真アップして次回、本題を続けます。

なにやら、紙に虫食いあとが・・・
そして、文化財のお家なので普段はだれも住んでいません。
管理はされていたようですが、お手入れはされてなかったようです。
ということは・・・虫クンたちは・・・。
表の状態から判断するとちょっと大変だけど、まあ、自分の仕事を信じてやればなんとか・・・。
と頭の隅で、ふと考えたのが甘かった。
( 其の弐へつづく )
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